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福岡大学医学部 心臓血管外科 主任教授 田代忠氏
福岡市城南区の福岡大学病院。地域の中核的医療センターとして機能する同病院の心臓血管外科は、虚血性心疾患や弁膜症をはじめ、大動脈瘤、先天性心疾患など、年間240 例あまりの心臓血管手術を実施する。2004 年から心臓血管外科の"長" として、スタッフを束ねるのが田代忠氏(主任教授)。同氏は1991 年に人工心肺を用いない冠動脈バイパス術(オフポンプ)を国内で初めて試行し、成功させるという経歴を持つ。また、オフポンプのほかにも、大血管転移症に対する動脈スイッチ手術(通称:パシフィコ手術)を国内で最初に成功を収めている。 田代氏は、新しい医療技術を臨床に応用する際、「イメージ」が必要という。「当時、得られる情報は写真や文章ぐらいでしたが、そこから手術をイメージしていきました。どういう問題が起こる可能性があり、その場合どう対応するか-。やってみなければ分からない、ではなく、当然シミュレーションしておかなければならない。だからこそイメージトレーニングはとても重要です」(田代氏) 現在、田代氏は橈骨動脈を複数ヶ所のグラフトとして使用するシークエンシャルバイパスや、7 本・8 本つなぐ難しいオフポンプ、僧帽弁逆流に対するループ形成術やエッジ・トゥ・エッジテクニックなどを用いた弁形成術を映像に収めている。こうした記録は自身のレビューのためである一方、「若手の心臓血管外科医の経験不足をフォローするためでもある」と田代氏は話す。
クオリティの高い手術映像の発信・記録のために 「いまの若手の医師は、症例の重症化のため術者として多くの経験を積むのが難しい。それだけにリアルタ イムで行う術中のモニタリングや画像などのサポートツールが不可欠です。そうしたものでイメージを働か せ、擬似的ではあるけれども経験を積むことが彼らには必要なのです」(田代氏) 同大医学部では手術の映像を、医局、病棟問わずどこにいてもリアルタイムで見ることができる。そして このほど、田代氏はパナソニックの"術野フルHD 収録カメラシステムハイビジョンカメラ"(メモリーカー ドポータブルレコーダー[AG-HMR10]+コンパクトカメラヘッド[AG-HCK10G])を導入、クオリティの 高い手術映像の発信、記録を始めた。 「縫合用の糸や毛細血管までわかる、その画像の鮮明さに驚きました。私たちは日ごろ、手術では拡大鏡を 用い、ヘッドライトを付けています。つまり私にとって術野は明るく、拡大されたものであるわけですが、 このシステムで映る映像では、第三者が執刀医とまったく同じ術野を目にすることができる。よりリアルに 手術を経験できます。これなら学会発表、ライブ手術でも十分耐えうると思います」(田代氏) 田代氏は同システムでは画像の質だけでなく、インターフェースにも着目。評価している。「アングルを考え、 カメラは手術用のアームに付けて上から撮っています。カメラは清潔野の上にくるので感染には十分、気を つけなければなりません。今まで使っていたものは、カメラにいろいろなつまみや凸凹があったため、ホコ リが溜まりやすいという問題点がありました。ビニールで覆い、また頻繁な掃除で対応していましたが、手 間がかかります。その点、今度のカメラはコンパクトなので術者のジャマになりませんし、デザインがシン プルで、清潔、感染対策にも十分配慮されている。これだけの高性能で、かつ医療用のニーズを十分満たし ているにも関わらず、値段的にもリーズナブルなのはありがたい」(田代氏) 現況、スタピライザーや低侵襲冠動脈バイパス術(MIDCAB)が登場するなど、より安全に、低侵襲にと手 術は進化を遂げている。「新たな手技を質のよい状態で記録し、映像として流す機会は今後、ますます増えて くるでしょう。今回導入したパナソニックの"術野フルHD 収録カメラシステム" のようなモノは、我々にとっ て不可欠なツールだと思います」(田代氏)