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3式が導入されているP2カムAJ-HPX2100
松阪ケーブルテレビ・ステーション(三重県松阪市、以下MCTV)は2009年3月より、コミュニティチャンネルのHD放送を開始しています。HD化にあたって同社はテープレス化も推進。標準映像フォーマットとしてAVC-Intra 50コーデックを採用し、取材・編集・スタジオ収録からアーカイブまで、P2HDシリーズをフルに導入にしたテープレス・ネットワーク・システムの構築と運用を実現しています。
■シンプルなワークフローを目指してテープレス化 MCTVのHD放送開始は、CATV普及率が全国一という三重県内において、他局に先駆けたものでした。同社はHD化計画の中でまず従来のDVテープベース・システムをテープレスへ移行し、ネットワーク・ワークフローを構築することをテーマに掲げました。 HD化の指揮を執った制作部次長の杉本敏孝氏は、フォーマット選定の経緯についてこのように話しています。 「07年6月に制作部HD化検討委員会を立ち上げたとき、次世代への対応はテープレス化しかないということでは全体の意見が一致していました。次に検討したのがフォーマットです。他局のシステムや機材展を見学するなど情報収集したうえで、パナソニックから提案を受けたAVC-Intraが画質と伝送効率などの面で良いのではないかと判断しました。取材した後、送出からアーカイブまで、ひとつのフォーマットで管理できることも大きなポイントでしたね。他局のなかには、データ転送やファイルフォーマットの変換に時間を費やし、苦労されているところもありましたから、統一フォーマットでシンプルなワークフローを組むことにメリットを感じました」。
■転送速度と画質からAVC-Intra 50を選定 統一フォーマットにはAVC-Intra 50が採用されました。 「最高画質のAVC-Intra 100にすべきか迷いましたが、AVC-Intra 50を選びました。50Mbpsならデータ転送速度が確保できますし、画質も充分に高画質ですから」(杉本氏)。 MCTVは松阪市と隣接していない志摩市をサービスエリアにしているという特殊性があります。志摩センターでは本社とは別編成で番組制作をし、取材・編集はそれぞれの局が行います。配信は本社の配信センターを共有し、2系統送信をしています。そのため、志摩から本社への完パケデータの伝送速度も重要な選定基準となりました。 取材システムにはAVC-Intra対応のP2HDカメラレコーダーAJ-HPX2100が3式導入されています。また他社製の小型テープレスカメラも手軽なニュース取材のために導入しています。当時はAVC-Intraに対応している小型モデルがなかったからだといいます。このため現状では二つの取材フォーマットが存在していますが、編集時にAVC-Intraに統一することで、その後のワークフローはシンプルなものになっています。 編集はトムソン・カノープス製ノンリニア編集システム HDWS-3500を本社に5式、志摩支局に3式導入しています。素材サーバーを設けており、編集システムをすべて同じスペックにしているため、どこからでも同じ環境で作業可能となっています。例えば、編集後に発生した映像およびテロップの修正は、空いているどの編集機からでも対応できます。
■ランニングコストも低減、一元管理システムに発展 P2カードは、64GBカードを計20枚導入し、スタッフごとに割り当てで配布したほか、他社との番組交換用や予備用に使用しています。取材・収録に使用したカードは編集機への転送後にすぐに初期化してリユースに回し、有効利用を図っています。このワークフローによりカード管理も簡素化されました。 導入後1年が経過して、P2の効果について同社制作課係長の前田琢也氏は、「カードがリユースできることと5年間無償修理特約によって、ランニングコストが抑えられています。ワークフローの効率が良くなったのは当初の期待通りですね。取材データの編集機への取り込みが速いことで、編集作業への取り掛かりが圧倒的に早くなりました。」と話します。 新しくなったスタジオ収録設備は、編集システムとネットワーク接続しています。送出・編成支援システム上で編成表の生成およびEPGデータを作成した後は、送出サーバーから確実な送出が可能になっています。 放送後の番組データは、ブルーレイ・ディスクに自動でアーカイブされ、一連の設備は送出・編成支援システムで一元管理しています。これらのシステムは、パナソニックがSIとして担当しました。 MCTVは、一元管理システムを発展させ、アーカイブ放送やデータ放送、VOD、既存のテープライブラリーのデジタル・アーカイブ化などの実現を今後の検討課題としています。